nTop 5が登場:インプリシット・エコシステムを拡大し、パフォーマンスと精度を高める
Written by Trevor Laughlin | VP, Product at nTop
Published on June 24, 2024
10年以上にわたり、従来のCADソフトウェアの限界を超えた高性能な設計をできるよう、エンジニアリングチームの支援をすることを私たちの使命としてきました。その間、nTopで開発された製品は、私たちを驚かせてきました。超高効率熱交換器から航空宇宙用の超軽量部品、患者個々に適合し骨癒合を促進するインプラント、さらには週末のゴルファーが切実に必要としているアシストを提供するゴルフクラブまで、様々な製品が生み出されました。
あらゆる交流を通して、私たちはツールを継続的に改善するのに役立つ多くのことを学びました。より高いパフォーマンスの実現のため設計の限界に挑み続けるユーザーの皆様に、nTopはどのような要求にも応えられるようにすることを目指しています。
本日、私たちはnTop 5を発表できることを嬉しく思います。nTop 5は、このソフトウェアの最新のメジャーリリースであり、コンピュテーショナル・デザイン・テクノロジーを飛躍的に前進させるものです。このリリースに含まれる新しいインプリシット・モデリング・カーネルは、皆様からの非常に洗練されたアプリケーションから学んだすべてを取り入れ、さらに優れたパフォーマンスと精度を実現します。また、インプリシット・モデルをそのまま読み込んで活用できるようになった統合パートナーとして5つのソフトウェアを発表できることを嬉しく思います。これにより、さらに多くのツールを網羅した効率的なエンドツーエンドのワークフローを作成できます。
nTopとシミュレーションおよび製造用ソフトウェアとの間で
インプリシットファイルを相互運用することにより、
設計から製造までのより優れたプロセスを構築
昨年、当社はnTop Coreの提供を発表しました。これは、nTop内で作成された*.implicitファイル内の情報をアプリケーションでネイティブに読み取り、活用することを可能にするソフトウェアパートナー向けの開発者ライブラリです。ここでの意図はシンプルです。製品開発では他のソフトウェアも使用する必要があるため、nTopモデルをシンプルかつ簡単にそれらのソフトウェアで活用できるようにしたいのです。
今年は、nTop 5に加え、nTop Coreも最新のインプリシット・モデリング・カーネルを使用するようにアップデートされたことを発表できることを嬉しく思います。また、nTop Coreを統合した5つの新しいパートナーにより、機械シミュレーション、数値流体力学(CFD)、ビルド準備ツールを含むインプリシット・エコシステムが拡張され、インプリシット・ジオメトリの他のソフトウェアへのシームレスな交換が可能になりました。
製造・生産
インプリシットの相互運用性を必要とする用途としては、ビルド準備と製造が大差をつけて第1位となっています。これには十分な理由があります。ジオメトリの複雑さが増すにつれて、メッシュベースの3Dプリンティングフォーマットを使用しての設計と造形準備のアプリケーション間、ひいてはそれを製造するAMマシン間でモデルデータを転送させることがますます難しくなってきています。
Materialise Magics
Materialiseとの統合により、nTopでデザインされ*.implicitファイル形式で保存されたパーツを、メッシュなしで直接Magicsにインポートすることができます。Magics内部では、モデルをセクション分けして分析したり、パーツの重要なフィーチャを測定したり、生産用のビルドパラメーターを準備して検証したり、最適化されたツールパスを生成したりすることができます。
このインテグレーションの初期テストを通じて、さまざまなアプリケーションにおいて、ビルド準備とスライシングの時間が大幅に短縮されることがわかりました。私たちはMaterialise とのアーリーアクセスプログラムを発表できることを嬉しく思います。このプログラムに参加すれば、正式リリース前にこのテクノロジーを試用することができます。この早期試用をご希望の方は、こちらからご登録ください。
Autodesk Fusion
nTop for Autodesk Fusionアドインにより、nTopユーザーは下流タスクにインプリシットモデルを生かすことで、設計から生産までの高度なワークフローをより簡単に完了できるようになります。nTopユーザーは、Fusion用のnTopアドインを使用して、Autodesk CAD/CAMツールにモデルを簡単にインポートできるようになります。Fusionでモデルを分析し、より大きな製品アセンブリにインプリシットモデルを統合し、Fusionの高度な製造ツールセットで生産用のモデルを準備することができます。
現在nTopおよびAutodesk Fusionをご利用のお客様は、本日よりAutodesk App Storeにてアドインを入手いただけます。
メカニカルおよびCFDシミュレーション
非常に複雑なジオメトリの場合、シミュレーションのためにメッシュを作成する際に大きな問題が生じます。なぜなら、評価対象のパーツを適切に表現するために、より小さなメッシュを大量に必要とするからです。メッシュ生成プロセスには長い時間がかかるだけでなく、反復的な設計プロセスをサポートするためには、解析の実行時間が一般に想定される範囲を超えることがよくあります。そのため多くの場合、物理的なテストか、非常に単純化されたモデルのシミュレーションが唯一の選択肢となります。
この課題を解決するための、ワークフローからメッシュを排除した3つの新しいシミュレーションパートナーを発表できることを嬉しく思います。.implicitモデルをこれらのアプリケーションにネイティブにインポートできるだけでなく、解析のためにメッシュを作成する必要がないアプリも含まれています。これにより、解析の反復にかかる時間を従来の数日から数時間に、あるいは数時間から数分に短縮できる可能性があります。
Hexagon scSTREAM
ヒートシンク、チルプレート、マニホールド、フィルターに使用される設計戦略の進歩のためには、高性能で複雑なジオメトリに対応できる迅速なCFD解析が必要です。これを実現するために、私たちは、大規模で複雑な設計を比類のない効率と最小限の手作業でシミュレーションできるCFDアプリケーションであるHexagon scSTREAMと提携いたしました。scSTREAMとnTop Coreの組み合わせは、nTopのインプリシットモデルを直接データ転送する技術に基づいているので、ユーザーが設計を簡略化したり妥協したりする必要はありません。そのため、設計の早い段階でCFDシミュレーションを取り入れることが容易になります。この組み合わせにより、ユーザーは従来と比べて10倍以上の回数のシミュレーションを実行し、熱設計の最適化に役立てることができます。
Intact.Simulation
Intact.Simulationは、メッシングのボトルネックが存在しないメカニカルシミュレーション機能を提供します。Intact.Simulationを使用すると、インプリシットモデル上で線形弾性解析を忠実度を損なうことなく直接実行できます。nTopで解析条件をセットアップしてシミュレーションを起動することができます(熱解析とモーダル解析は近日公開予定)。コンフォーマルFEメッシュを必要としないこの斬新な手法により、従来のFEAツールでは時間がかかり実用的でなかった、ラティスやその他の非常に複雑なジオメトリを含む設計を、より高速に繰り返し解析することができます。
Lockheed Martin Missiles & Fire Controlのエンジニアリング・リサーチ・プリンシパルであるChristopher Yakacki氏は、Intactとの統合を活用した後、次のように述べています。「nTopにIntact.Simulationが統合されたことで、メッシングのボトルネックが解消され、複雑なジオメトリやラティスを我々が望むペースでシミュレーションできるようになりました。このことは、これらの構造の最適化を飛躍的に加速させる可能性を秘めています。nTopとIntactのパートナーシップは、顧客のエンジニアリング上の課題に取り組むという彼らのコミットメントの一例です。
Intact.Simulation for nTopの詳細はこちら
Cloudfluid
熱交換器やマニホールドに対するより高度な設計要求に対応するため、これらの複雑なフィーチャを含む製品の流体解析を実行するソリューションが強く求められています。今回の統合によって、cloudfluidはまさにそれができるようになりました。cloudfluid は、nTop Core を通じて *.implicit モデルをインポートし、メッシュを作成する必要無く、モデル上で直接シミュレーション条件を設定し、クラウドベースの GPU ソルバーで結果をすばやく計算できます。そのため、熱交換器の設計ワークフローが大幅に高速化されます。さらに、nTopで解析条件をセットアップしてcloudfluid起動するためのカスタムブロックが利用でき、流体解析 ワークフローをさらに効率化できます。この統合は現在、テクニカルプレビュー期間中です。
nTop 5の次世代インプリシット・モデリング・カーネルを使用して、
より高速かつ高精度に設計
すべての設計アプリケーションの中核には、モデリング・カーネルがあります。ふつうはその存在に気付くことすらありません。これはバックグラウンドで実行されていて、あなたがユーザーインターフェースで入力した条件を受け取り、数値計算し、その意図に合ったモデルをスクリーンに表示するために必要な処理を行います。カーネルそのものはユーザーには見えませんが、モデリングソフトが行うすべての動作に不可欠なのです。カーネルの機能を開発し、それを生かすためのユーザーインタフェースを決定することで、モデルを作成する際のパフォーマンスと精度が決まる、とも言えます。
nTopは、多くの高性能製品に内在する複雑なジオメトリを応答性よく生成する能力を強化するインプリシット・モデリング・カーネル(ほとんどの3D CADソフトウェアに見られる境界表現(B-Rep)カーネルとは対照的)を備えている点でユニークです。このインプリシット・カーネルは、nTopの最初のリリースから今日に至るまで、nTopが提供するすべての機能(ラティスから最適化、シミュレーション、レンダリング、メッシング、スライシングなどまでの全て)を支える基盤となっています。
将来を見据え、私たちはさらに限界に挑戦し続けたいと思います。――より複雑なジオメトリが可能にする、より高性能な製品。モデリング作業の高速化と自動化による、開発サイクルの短縮。よりタイトなトレランスの製品。他アプリとのシームレスな統合によるワークフロー。――
この願望を実現するために、私たちは新しいインプリシット・モデリング・カーネルを一から構築する必要性を認識しました。私たちは、10年以上にわたってお客様とともに非常に複雑な設計課題に取り組んできた経験から学んだことをすべて取り入れ、モデリングの可能性を広げ、スライス、メッシュ作成、レンダリング操作を高速化し、さらに高い精度を実現するための強力な基盤を提供したいと考えました。
nTop 5を起動しても、すぐには何かが変わったことに気付かないかもしれません。ユーザー・インターフェースは変わっていません。あなたのモデルも同じように見えるでしょう。しかし、広範囲にわたる内部テストの結果、新しいカーネルは平均計算時間を約10%短縮することを実現しました。私たちは特に、多数のプリミティブ形状間のブーリアン演算パフォーマンス向上に注力し、平均で90%以上高速化されました。ただし、モデリング精度の向上と、入力のわずかな数値の違いにも敏感なアルゴリズムの導入により、特定のジオメトリでは一部の操作が遅くなる可能性があることに注意してください。
そして何よりも、nTop 5の新しいカーネルは可能性をさらに高めることを明確な目的として構築されたものであり、現時点ではその始まりに過ぎないということです。私たちは、この新しいカーネルによって可能になったさらなる機能強化やパフォーマンスの強化を、今後数週間から数ヶ月のうちに展開することが楽しみで仕方がありません。
Trevor Laughlin
VP, Product at nTop
Trevor LaughlinはnTopの製品担当VPであり、製品管理、製品設計、テクニカル製品サポートなど、製品組織とビジョンの指揮を担当。2018年初頭にnTopに入社する以前は構造エンジニアとして航空宇宙業界で活動し、NASAで使用されるコンセプチュアル・デザイン・ソフトウェアの開発に携わった。ジョージア工科大学で理学修士号、アイオワ州立大学で航空宇宙工学の理学士号を取得。現在はニューヨークを本拠地としている。